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したなおい

千葉県鴨川市 , 2017

 

 

 千葉県鴨川市の四方木地区に完成した移住促進プロジェクトの拠点施設。「したなおい」という屋号の民家を改修デザインを行った。クライアントは活性化を目指す区であり、彼らと企画段階から一緒になって設計を進めていった。

 

地域活性化を楽しむための拠点

 近年、田舎暮らしが再評価される中で、各地において移住者獲得競争が激化している。様々な取り組みをしてもなかなか移住者が獲得できない地域もある一方で、移住者を獲得できた地域では、昔から住む住民と移住者との関係構築がうまくいかないなどの新たな問題が生まれている。

 このプロジェクトがスタートし、すでに行われていた移住者促進イベントを見学する機会を得た。そこでは移住者に楽しんでもらうことはもちろんのこと、自分たちが楽しむことが盛り込まれているように感じた。これは僕らが提唱する「道楽としてのまちづくり」の概念と一致しており、この概念を共有した集団(ここの場合、区)と協働することでどのような空間ができあがるかを見る実験的な取り組みとなった。

 

自分たちの空間を自分たちで手に入れるワークショップ形式での工事

 企画段階において

1.可能な範囲の工事は全て自分たちでやりというということ

2.改修工事をイベント化しワークショップ形式で工事を進めるということ

が求められた。

 そこで区の中で工事に参加する者、区外のワークショップに参加する者の得意なこと、性格を聞き取っていった。責任感のある区の中心人物、DIY好きの細かい木材の加工が得意な者、ミニショベルを扱える者、左官工事が行える者、手先は不器用だけど積極的に工事に参加できる者・・・。それらを重点的に工事内容に含み、それらを組み合わせ、整理することで設計を進めていった。

 

素人でもできる工事

 DIYで失敗するケースの多くは「なんとか自分でもできるだろう」と思いやってみたところ、結局、質悪く完成してしまうことだろうか。この工事の参加者は全てが建築工事の素人である。そこで設計にあたり、素人でもできる工事を組み合わせることにした。

 家具工事などの細かい寸法の狂いが品質に大きく関わる部分については、近隣のホームセンターの木材のカッティングサービスを利用できるように設計を行い、カットされた部材を組み合わせることで精度の高い家具が製作可能なようにしている。また木材への塗装工事にあたってはムラができにくいように、ペンキを塗装後、布で拭き取る塗装方法を行うなど、素人が行っても、質が落ちない工事方法をとっている。

 

オリジナルに戻すことが建物を維持すること

 したなおいは、元々の部分が昭和中期に建てられ、その後昭和50年代くらいに増築されていると推測できた。調査の結果、増築部分、特にオリジナルな部分と増築部分の間の劣化が激しいことがわかった。このように古い民家において最も劣化の進みが激しい箇所は、増築部分であることが多いが、このしたなおいも同様の状況であった。以上より、したなおいでは増築部分を減築し、劣化が進んでいる部分を切り離すことで建物全体の寿命を長くすることを図っている。