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シラハマ校舎[校舎部分]
南房総市立旧長尾小学校・幼稚園再利用計画 [設計監理]
千葉県南房総市 , 2015-2016
2012年に閉校した小学校の再利用プロジェクト。木造平屋建ての校舎をオフィスやショートステイ、レストランを含んだ複合施設へとリノベートし、校庭部分は小屋と農園がセットになったクラインガルテンとして活用する。
「農ある暮らし」
本施設は近代の都市的なライフスタイルから離れ、「農」をライフスタイルの中に取り入れた暮らし(=「農ある暮らし」)を提案する施設として位置付けられた。農ある暮らしとは、
1)日常的に農作業を取り入れた暮らし
2)自らの手で作った農作物を食す暮らし
3)自給率を高めた食生活
4)恒常的に身体を動かす機会のある健康的な暮らし
5)家族や友人と協力して作りある喜びの暮らし
以上は近代都市の中でも実現するはずだった暮らしであるが、結果は今の東京をはじめとする都市の状況である。このプロジェクトでは、近代都市を否定はしないが、それらと異なる先述したような人間的な暮らし方を問い直し、その暮らしが今でも根付く千葉県の南房総に実践のための空間を求め、プロジェクト化している。
「愛着が生む空間の魅力」
利用されない建物は傷みやすいとはよく言ったもので、南房総エリアには利用されず静かに死んでいく建物が山ほどある。この建物も廃校になった後、その死を待っているだけのものであったが、行政と民間が協働し、新たな役割を与えられ、その命を吹き返した。その原動力と言って良いものは、「人の建物に対する愛着」である。小学校という施設は多くの子供達、教職員が長い時間過ごした場所であり、多くの利用者の生活の思い出が蓄積された施設である。大事に使われていた痕跡がところどころに見られ、それこそがこの建物の魅力の本質である。その魅力を損なわないように丁寧に扱うことが本プロジェクトのデザインであった。
建物の性格が使い方を決める
建物はかって小学校、幼稚園として利用されていた。そのため教室は当然の事、図工室、パソコン室、図書室、プレイルーム・・・と様々な役割を与えられていた。それぞれの教室はその役割ごとの性格を与えられ、性格に見合った設えがある。本プロジェクトのデザインは、その性格を読み取り、性格にあった新たな役割を与えることにした。水周りが揃った図工室はシャワールームに。広々とした活気のあるプレイルームは来訪者や利用者のための共用リビングに。落ち着いた空間のパソコン室はショートステイに。そして集中して勉学に励む普通教室はオフィスに、それぞれ変更している。小学校、幼稚園として使われていた時の空間体験を、用途を変更した今でも追体験できるデザインを目指している。