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オステリア・ベッカフィーコ

千葉県館山市 , 2014-2015

イタリアンレストラン+住居

※一級建築士事務所アーキテクチャー・ラボと共同設計

 

 

 

館山市塩見に完成した店舗併用住宅。山と海が近接し、日本らしい里の風景が広がる環境にある。敷地は海に近接しており、古い漁港や砂浜、そして遠景に富士山を望むことができる場所である。

 

クライアントからの要求は、 1. 海を印象的に見せること(全面ガラス張りの強烈に海を見せるのではない)

              2. 奥さんの絵を飾る場所をつくること

              3. お客様へのサービスを効率的にできること

また景観維持からの要求で  4. 駐車場をきれいに並べること

 

以上の4つの要求を満たす形態が求められた。

 

 敷地の特徴は変形した菱形で、海へと続く小道が敷地の中央に向かってぶつかるようになっていた。レストランの客席スペースの一部をこの道の軸に合わせることで、客席からの眺望が、〈道ー周辺の民家−木々ー海ー空〉というレイヤー状に見える大開口部をつくっている。単純に海だけでなく、里海の生活や、季節の移り変わりなどが印象的に感じられ、これらの要素が客席の雰囲気をより多様なものにしてくれている。

 客席は『くの字』に曲げられ、ひとつの客席スペースを緩やかに分節している。これにより印象的な風景が見える客席スペースの他に、奥さんの絵を飾るギャラリー的な雰囲気を持つ客席スペースが生まれた。印象的な風景が見える客席スペースとギャラリーのような客席スペースの二つの性格が違う空間をつくることで、来店する度に様々な体験を得られるレストランとなった。また片方のスペースを完全にギャラリースペース化し、片方をレストランとしたり、または団体客スペースと個別客スペースに分けたりと、その時々に使い方を工夫できるフレキシブルな空間となっている。

 くの字に曲げた客席スペースから、三又の平面になるように厨房(その奥に住宅)を配置している。厨房の出入り口はくの字の客席スペースのちょうど真ん中にあるので、厨房の出入り口に立つと、全ての客席が一望できる。これにより瞬時に全ての客席の状況を把握でき、サービス漏れが少なくなる。また三又の平面により、変形した菱形の敷地に対して、一直線の綺麗な駐車場を確保でき、景観への負担を軽減している。

 

 漁村研究者である地井昭夫は著書『漁師はなぜ海を向いて住むのか?』の中で、漁師の住宅は、漁師の海からの恵みを迎え感謝する信仰心の現れとして海へ向かっているという趣旨の言葉を残している。ベッカフィーコは漁師の住宅ではないが、南房総で採れた海鮮を使用したイタリア料理を提供している。海と里の生活を改めて感じさせてくれるこのレストランでの体験を通して、シェフ、スタッフ、そして料理を食す我々も、もう一度、海からの恵みを迎え感謝する信仰心を再確認する建築であってほしいと願う。

 

 

[掲載]

「建築設計」日本建築設計学会 2016.4

「ローカルに生きる、ソーシャルに働く -新しい仕事を創る若者たち-」農村文化協会   2016.6

「KJ」株式会社KJ 2016.10

 

 

 

 

http://osteria-beccafico.com