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釜沼の湯小屋

千葉県鴨川市 , 2018

 

 

千葉県鴨川市の釜沼に完成した湯小屋。クライアントは十数年前にこの地に移住し、棚田トラスト運動を行いながら、昔ながらの里山の生活と風景を維持してきた。

 

彼の活動は農業体験を通した棚田の維持や高齢になった農業従事者のサポート、古くからこの地域の産業であった炭作りの技術の維持、そして祭礼などの地域活動など多岐にわたる。今となっては各地の里山での活動が注目されているが、彼はずっと前から里山での活動を進めていた。

 

クライアントの地道な活動により、各種メディアからも注目され、都内から個人、企業、大学などの関係者が多数農業体験にやってくる。田植えや稲刈りの時期には多数の参加者が集まり、子供だけではなく大人の楽しげな声も聞こえて来る。参加者が多数になる一方で、シャワーやトイレ、足洗い場の増設が必要になり、この湯小屋の計画が始まった。

 

 

里山の建築

 里山での暮らしは、自然の生態系の中に人間の暮らしを生態系全体を極力壊さぬようにしながら加えていくことだろうか。自然の恵みを享受しながら、人間の活動を自然に還元していく。そのような暮らしが残る釜沼では、人工物をささやかに周辺環境の中に配置している。この湯小屋も周辺の建物に倣い、山、傾斜、木々・・・などの景観要素の中に埋め込むように、ささやかに配置することにした。竣工後半年も経てば、周りの草木が伸びてきて、建物の全体像が一目できないまでになった。

 

風景に溶け込む建築

 建築家隈研吾は周辺環境に溶け込む建築を「負ける建築」と呼んだ。先述のように、ここでは周辺環境を読み込み、風景に溶け込む建築を目指した。周辺の木々は切らずに、成長に伴い建築の一部(また逆に言えば建築が自然の一部)になるように建築を配置した。また視覚的に自然に溶け込ませるとともに、炭作りが産業であった地区である歴史を鑑み外壁には焼杉材を用いている。焼杉材は既製品を用いたが角部のみ既製品がなく、角部の材のみ手作業で焼き、使用している。

 

 この湯小屋は2018年5月に完成し、田植えにきたドロドロになった農業体験の参加者を迎え入れた。夏の期間中は里山体験に来た人々が汗を流し、外のデッキで談笑しながらビールを飲み楽しむ。そして秋になれば稲刈りを行い汗を流した後に、湯小屋の前でささやかな収穫祭が行われる。湯小屋は銭湯ほど大きくないが、小さな人々のつながりをつくるのには十分機能している。これからもずっと里山の風景と暮らしを支える建築であってほしいと願う。