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TraycleMarket & Coffee

千葉県館山市 , 2016

 

カフェ/雑貨/ギャラリー

 

 

 

「痕跡の空間」

館山市に完成したフェアトレード商品を扱うカフェ兼雑貨店。建物は千葉県鴨川市で銀行として大正期に建築され、その後この土地の名士である小高氏によって現在の場所に移築され、事務所として利用された。平成6年からは小高記念館(資料館)となり、小高氏の詩集などが展示される建物であった。平成28年2月25日に国登録有形文化財。このプロジェクトはこの建物をリノベーションし、カフェ+雑貨店+ギャラリーにコンバージョンを行った。

 

古い建物には、その時その時の使用者が残した生活の痕がよく残っている。それは何か目的を持って残されたものは当然のこと、無意識のうちに、または事故的残されたものも含まれる。この建物もその時々の使用者によって残された、古くなった箇所を何度も塗り重ねられた跡や、思いがけず何かをぶつけたであろう建具の凹みの跡などが存在する。これらを総称して「痕跡」と呼ぶことにしている。

 

「痕跡」は、過去の利用者の生活を自らの身体を使って追体験する手がかりである。利用者とは、この建物が銀行であった時の銀行員、事務所として使われていた時の事務員や訪れた客である。彼らによって残された「痕跡」を身体を通してイメージし、追体験することでこの建物での体験がより濃密なものへと変化することに僕らは気づいた。つまりその場所で今起きている現象がこの空間を決定しているのではなく、その場所で過去から現在にかけて起きた/起きている現象がこの空間を決定している。

 

このプロジェクトでは、まず過去の「痕跡」を積極的に残すことにした。そのまま使える仕上げはそのままに、新しい材料は極力控えるようにしている。腐食した箇所は仕上げを取り去り、下地を露わすことで当時の大工の仕事の痕跡を顕在化させるデザインとした。また施主施工で行われた塗装も彼らの手の動きが残るような、砂が混ざった塗料で塗ってもらうことにしている。階段の施工の際に大工が残してしまった床に描かれた原寸図も大工の仕事の痕跡として残すことにした。

 

過去の生活者の痕跡に対して、リノベーション中の施工の痕跡が加えることで「痕跡の空間」としての強度を高めることになった。それは僕らの意図から離れた、偶発的に起きる彼らの「痕跡」をポジティブに捉え直す。それがこのプロジェクトにおけるデザインである。

 

そして将来的にこの建物を訪れた客やスタッフも新たな痕跡を残すだろう。その時にはまた違う「痕跡の空間」を見せてくれるはずである。

 

 

[掲載]

「房総カフェⅢ」暮ラシカルデザイン編集室 2017.2

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

http://trayclemarket.com